不整脈



エンサイト
不整脈は心臓の中で起こっている電気の流れの乱れから生じます。この電気の乱れは心電図によって間接的に表現されますが、実際の電気の流れを目で見ることは困難です。
エンサイトは従来目で見ることの出来なかった電気現象を目で見える画像に変換するコンピューターシステムです。この機械は実際に心臓の中を流れている電気を、カラー表示することで、不整脈の際に心臓の中で起こっている詳しい情報がとても分かり易く見られます。
この機械を用いることで、心臓のどの場所に悪い所があるのか詳しく調べることが出来るようになりました。特にカテーテルアブレーションの際には心臓の絵をコンピューター画面に表示しながら、病気の場所を探していくことが効率良く行えます。

急に脈が速くなりドキドキ(動悸)する、脈が乱れる、脈が抜けるといった症状を感じることはありませんか?

原因が心臓由来の不整脈のことがあります。不整脈は心臓の病気(心筋梗塞、心筋症、弁膜症、心不全など)があれば出現することは多くなりますが、特に心臓の病気がなくても不整脈が単独で生じることもあります。近年、不整脈治療の進歩はめざましく、カテーテルアブレーション治療、植込み型除細動器など、以前は薬でしか対処できなかった不整脈も治療でできるようになってきています。子供から大人まで、若い一見健康そうな方でも不整脈は出現することがあります。これらのうち、最近では不整脈による突然死が注目され、その病態は少しずつ解明されてきており、その診断治療方法も進歩してきています。当センターでは電気生理解析装置を導入し、積極的に不整脈治療に取り組んでいます。動悸や胸の不快感を伴うめまい、立ちくらみ、失神などの症状がある、検診で不整脈を指摘された方など、一度、医療連携室にご相談してください。

一般的な心電図検査(12誘導心電図)です。その検査中に不整脈が生じていなければ、不整脈の診断は困難となりますが、不整脈の出現しやすい心電図かどうかがある程度分かります。不整脈の発作中に心電図をとれなければ、ホルター心電図、心臓電気生理検査などの検査が必要となります。

不整脈の検査

2.ホルター心電図(24時間心電図)

小さな携帯型心電記録装置で不整脈を記録します。日常生活においてどれだけ不整脈が出ているか、症状と不整脈が一致しているかなどを調べます。検査中の生活は、入浴以外特に制限されないので、普通の日常生活をして検査を受けることができます。

3.運動負荷心電図(トレッドミル検査)

運動負荷心電図は、運動、労作による不整脈の出現や誘発性を見る検査です。運動中の心電図変化や不整脈が誘発されれば診断が可能となることがあります。また、特に不整脈をもっていて、運動をする方や心臓疾患がある方が、運動により不整脈の危険性が増加しないかを判断することができる検査です。

4.心臓電気生理検査

心臓電気生理検査

心臓は電気の刺激により動いており、心臓のなかには電気刺激を出す場所とその電気刺激が心臓全体に伝わるような電気の配線(刺激伝導系)が存在します。通常の心電図検査からは、それらを詳細に把握することは困難です。その際には電極カテーテルという細い管を大腿部や肩、上腕などにある太い血管から心臓に直接挿入し、電気の流れを観察したり、不整脈を誘発することにより詳しく調べることができます。これらの検査をもとに治療方針の決定をします。

不整脈の治療

1.薬物療法

薬により、脈の速さを調節したり不整脈自体を予防したりする治療法です。心電図検査や心臓電気生理検査などの結果により、どの薬が効果があるかを決定して投薬することになります。また薬の副作用により、他のより複雑な不整脈が誘発されたりすることがあり、薬の選択は専門的な判断が必要になります。

2.高周波カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)

カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる心筋の至適部位(異常な興奮を起こす病変部、または不整脈の電気的回路がある部位)を標的にして、高周波により異常心筋を加熱し凝固壊死させることで不整脈を治療する方法です。方法としては、局所麻酔で大腿部や肩、上腕などの血管から心臓まで数本の電極カテーテルを挿入し、心臓電気生理検査を施行した後、アブレーション用のカテーテル電極で、心内心電図(心臓内の心電図)を観察しながら操作して、心内心電図のパターンと透視上の解剖学的部位からカテーテル先端が至適部位に当たっていることを判断し高周波により治療を行います。
対象となる不整脈は、主に脈が速くなる(頻脈性)不整脈であり、WPW症候群、発作性上室性頻拍、心房頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍などがあります。

3.ペースメーカー治療

ペースメーカー治療

脈が遅い(徐脈性)不整脈に対して、ペースメーカーという機械を体内に植え込むことにより脈の速さを調節する治療です。対象となる不整脈は、洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性心房細動などがあります。
手術は、局所麻酔で胸の鎖骨下の皮下に機械を植え込み、静脈を介して心臓まで電気刺激を感知したり伝えたりする電線を留置します。手術自体は1~2時間で済みます。退院後は、機械の調子や不整脈の出現を観察し、電池消耗を見するために、定期的(3~6ヶ月)に外来通院が必要となります。病態、ペースメーカーの機種によって異なりますが、ペースメーカーの電池寿命は7年から10年です。

4.両心室ペースメーカー治療

心筋梗塞や拡張型心筋症など心臓の収縮機能が低下した方で、心臓内の刺激を伝える線維の障害のためにいっそう心臓の働きが低下し心不全が悪化している場合があります。こうしたケースでは、左心室と右心室を同時に刺激できるペースメーカーを埋め込むことにより、心機能を改善し日常生活の行動範囲が拡大できることがあります。ペースメーカーは従来、脈の遅い方の治療器具でしたが、重症心不全の治療器具としても応用できるようになりました。薬の治療だけでは限界で、他の治療の効果が少ないときに行う治療です

5.植込み型除細動器(ICD)

植え込み型除細動器(ICD)

薬物や他の治療(カテーテルアブレーション)により予防が困難な突然死を引き起こす可能性のある致死性不整脈が対象となります。電気刺激や電気ショックでその不整脈を治療する機械を体内に植込む治療です。対象となる不整脈は、一部の心室頻拍や心室細動といった命に関わる危険な不整脈です。植込み方法や、植込んだ後の外来通院はペースメーカー治療とほぼ同様ですが、ペースメーカーよりも多機能であるため機械はペースメーカーよりも一回り大きなものとなります。

徐脈性不整脈

洞不全症候群(SickSinus Syndrome)

右心房の上部にある洞結節(発電所の役割)というところの異常によって、心臓の中で電気が作られなくなる病気です。洞結節からの電気供給不足のため脈が遅くなるか、または時々心臓が止まるようになります。徐脈と同時に頻脈も出てくることがあります。頻脈が停止した時に心臓が止まりやすくなり、ふらつきや失神が起こります(徐脈頻脈症候群)。一般に数秒以上心臓が停止するとふらつきが起こり、10秒以上停止すると意識がなくなって倒れる。徐脈が原因で心拍出量が減少することで、一過性の脳血流の障害を生じ、その結果、めまい、失神発作、痙攣を起こすものをAdams-Stokes発作といい、治療が必要です。
また徐脈状態が長く続くと、心臓の機能が低下して心不全になることがあります。 脈が遅いために失神やふらつきなどの症状が出現した場合は、ペースメーカーの植え込みが必要となります。症状がなくても、4秒以上の心停止が24時間心電図で見つかった場合はペースメーカーを植え込みが必要となることがあります。また、高血圧などの薬剤によって一時的に洞不全症候群が生じることがあり、薬剤の中止によってその機能が回復する場合はペースメーカーの植え込みは不要です。

房室ブロック (AtrioVentricular Block)

心房と心室の間には電気の流れを調節する役目をする房室結節(変電所の役割)という組織があり、心房と心室を電気的に接続しています。この房室結節機能が低下して、心房から心室の方へ電気が伝わらなくなるために脈が遅くなるのが房室ブロックという病気です。重症度によりI度、II度、II度に分けられます。生理的な現象として房室結節からの電気が少し伝わりにくくなり、I度またはII度(Wenckebach type)のブロックが起こることがありますが、無症状であれば心配はありません。心筋症のような心臓疾患に伴ってII度(Mobitz typeII)~III度の房室ブロックが起こった場合は、極端に脈が遅くなったり、時に心臓がそのまま止まったりしてしまうことがあります。脈が遅くなった時に、めまい、失神、心不全などが起こります。房室ブロックは洞不全症候群と異なり、原因となる心臓疾患が隠れていることが多いので、心臓カテーテル検査や心臓電気生理検査などが必要となることがあります。治療が必要なのは脈が遅いために失神やふらつきなどの症状が出現した場合です。重症度の高いII度(Mobitz type II)~III度の房室ブロックの場合、多くは永久ペースメーカーの植込み手術が必要です。

頻脈性不整脈

期外収縮

不整脈の中で最もよく見られるのが期外収縮です。これは心臓の中で規則的に電気を送ってくれる洞結節とは別の場所から、やや早いタイミングで心臓に電気が出る現象です。期外収縮はほとんどの人に認められます。このうち心房から出てくる期外収縮を上室性期外収縮、心室から出てくるものを心室性期外収縮といいます。これらが出ると、脈が1拍欠けたように感じますがします。やや早期に心臓が収縮したために、脈としてふれることができなかった、つまりその1拍分の脈圧が弱かったために脈をふれなかっただけにすぎません。期外収縮は症状としてそれを感じない人の方が多いのですが、のどや胸の不快感や動悸をとして感じる人もいます。期外収縮が連続して出現したときは一時的に血圧が下がり、めまいや動悸がすることもあります。
期外収縮は病気に関連して起こることもありますが、多くは病気とは関係なく、年齢や自律神経の変動でその頻度や症状の強さが変わります。しかし、心室性期外収縮の一部は心筋梗塞や心筋症(器質的心疾患)などのが原因で起きている場合があり、そのため危険な不整脈に移行することがあります。心疾患が隠れていないか、また期外収縮から危険な不整脈に移行する可能性がないかを一度病院で調べてもらったほうが良いでしょう。治療は、症状がある場合は抗不整脈薬や安定剤を服用します。症状がない場合でも、不整脈の原因となる疾患があって、しかも危険な不整脈に移行する可能性があれば、抗不整脈薬が必要になります。一方、症状のない上室性期外収縮のほとんどは治療の必要がありません。

発作性上室性頻拍 (Paroxysmalsupra-ventricular tachycardia)

心臓の電気信号が複数の経路を伝わって、回っている状態です。突然速い動悸が始まり突然終わるのが特徴です。めまいや失神を起こすことがありますが、重症の心臓病などがなければ致死的とはなりません。発作性上室性頻拍には、その不整脈メカニズムには、WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍などがあります。いずれも、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)による治療法があります。

WPW症候群(Wolf-Parkinson-White Syndrome)

WPW症候群のアブレーション

発作性上室性頻拍を引き起こす不整脈疾患の一つです。WPW症候群では、心室が早期に興奮することでデルタ(Δ)波と呼ばれる特有の波形が心電図のP波の後に現われるのが特徴です。Kent束と呼ばれる副伝導路が存在し、この回路を回る電気の興奮が発作性上室性頻拍を引き起こします。Kent束は、右房-右室あるいは左房-左室に存在するものがあり、稀に心室中隔に向かう場合もある。また、WPW症候群は、心臓突然死の原因の一つと考えられており重要である。これは、発作性上室性頻拍とは別の心房細動、粗動などの頻拍性不整脈が発生すると、頻繁な興奮がKent束を通り、頻拍として心室に伝導され心室頻拍又は心室細動を引き起こすためである(偽性心室頻拍:pseudo VT)。このような例に対しては、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)により副伝導路を断つ治療が必須である。

房室結節リエントリー性頻拍(Atrioventricular nodal reentrant tachycardia:AVNRT)

房室結節に2つの電気刺激伝導路(速伝導路、遅伝導路)がある場合には房室結節リエントリー性上室頻拍と呼ばれる不整脈が生じます。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)によって、2つのうち1つ(遅伝導路)を治療することで根治が可能です。

心房頻拍(Atrial tachycardia:AT)

心拍数が100回/分以上みとめられ、洞結節機能の低下に関連して心房の一ヶ所、もしくは複数ヶ所が興奮し頻拍の原因となったり、小さな範囲の電気回路を回るタイプのものがあります。症状は動悸やめまいなどが出現することが多くなります。電気的な興奮部位をカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)によって治療することで根治が可能です。

心房粗動 (Atrial flutter:AFL)

心房粗動のアブレーション

心房粗動では心房の中で一定の回路を通って規則的な電気の旋回が起こっています。症状は動悸やめまいなどが出現します。心電図上、F波と呼ばれる鋸状の規則正しい基線のゆれが300回/分程度で認められますが、心房の収縮は心室には一定の割合で伝わるため、心拍数はその割合により変化します。心房粗動を引き起こす心臓内の電気回路の一部を遮断することで頻拍を根治できます。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)により、頻拍のコントロールが可能です。

心房細動(Atrial fibrillation:AF)

心房細動は心房全体が速く細かく動くことを意味します。原因は(1)心房のどこかに電気興奮部位ができて、そこで猛烈な勢いで電気がつくられてしまう、(2)心房の中に異常な電気回路が数多くでき、不規則な電気の流れ(旋回)が起こる、という2つの仕組みが考えられています。
心房細動に心房は1分間に300から500回ほど電気的に興奮し、細かく動きます。ただその電気信号が心室にすべて伝えられるのではなく、房室結節(変電所の部位)で適当な割合で心室に伝導します。そのため心房細動時には不規則に電気が心室に伝えられ、心臓は全体として1分間に60回から200回の頻度で不規則に興奮します。ですから脈はまったくバラバラで打ち、動悸がして息苦しくなり、時にはめまいや胸痛などの症状が出る場合があります。心房細動は、時々発作の起こり7日以内に自然停止する発作性心房細動と、7日以上持続し停止しなければ持続性心房細動、除細動が不成功かされなかった永久的に持続する慢性心房細動に分けられます。
心房細動は70歳を超えると、病気のあるなしに関係なく出現する不整脈で、原因は心房筋肉の一種の老化現象ではないかとも考えられています。その一方で若い人にも出ることがあり、高血圧、肺疾患、甲状腺機能亢進症、弁膜症、心臓の手術後などで多くなります。治療は、薬剤で不整脈を抑制したり、高齢者には血栓予防が必要となります。薬剤の他に、電気ショック(電気的除細動)、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術) mso-bidi-font-family:”MS 明朝”‘>による不整脈起源を隔離する方法、ペースメーカーなどがあります。年齢、心臓疾患の有無、発作の頻度などでその人にあった治療を選択することになります。

心室頻拍 (Ventricular tachycardia:VT)

心室頻拍は、心室に発生した電気興奮が旋回することや心筋細胞の電気興奮の自動能が亢進することで発生します。心室の興奮頻度は120~250/minとなる。心筋梗塞が基礎疾患として存在する場合には、頻拍によって心臓のポンプ作用が低下し、血圧の低下や心拍出量の減少が起こる。心室頻拍は30秒以上持続する持続性(sustained VT)と、30秒以内に自然に治まる非持続性(nonsustained VT)に分類される。心電図異常を認めるQT延長症候群という疾患では、発生する心室頻拍では、頻拍時の波形がねじれたような形を取るものをトルサード・ド・ポアー(torsade de pointes)と言い、時に心室細動に移行する場合がある危険な不整脈です。

心室細動 (Ventricular fibrillation:VF)

致死的不整脈で、電気の小さな渦巻きが無秩序に心室全体を興奮させるため、心臓は収縮しなくなり、血圧が急激に低下します。3~5分以内に電気的除細動による治療をしないと致命的となります。心臓からの血液拍出はゼロのいわゆる心停止状態で、数分で循環停止、呼吸停止になり、さらに脳、腎臓、肝臓など重要臓器に不可逆性の障害を来たして最終的には死亡してしまいます。
 心臓突然死の多くは、この心室細動が主な原因です。一般的に、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、心筋症などがあれば心室細動の出現リスクは高くなります。しかし、明らかな心臓疾患がなくても心室細動が突然出現することがあるので予防は非常に難しくなることがあります。この心室細動の治療は電気的除細動を一刻も早くする必要があります。薬剤で発作を抑制できない人や再発が予想される人には、不整脈を体内で自動的に感知して電気ショックを行う植込み型除細動器(ICD)の治療が必要となります。しかしながら、「心室細動」は初発の人がほとんどなので、病院到着までにいかに救命するかが重要となります。最近では、救急車だけでなく、スポーツ施設、人の多く集まる公共施設、空港などには自動体外式除細動器(AED)という機械が設置され、早期の電気ショックによる治療が可能となり救命率が向上してきています。

Brugada症候群

心電図に(1)V1,V2のST上昇(2)右脚ブロック(3)正常QTc間隔の特徴を持つ患者に「心室細動」発作を繰り返し起こすことがあります。心筋細胞のNaチャンネルの異常が関与していると推察されている。心電図所見が上記基準を満たすが、発作を起こさない症例はBrugada型心電図と呼ばれます。1度でも「心室細動」の既往のあるBrugada症候群は植込み型除細動器(ICD)の適応となります。