心臓手術麻酔について

心臓の麻酔のながれ

手術前日まで

手術・麻酔を行うにあたっての必要な患者さんの情報を集めます。

その上で実際に患者さんにあって、さらに詳しい情報を収集します。手術前回診といいます。この時は、患者さんの以前の病気、現在お持ちの病気、薬に対するアレルギー、以前に全身麻酔を行ったことがあるかをお聞きします。

また、現在心臓の機能がどの程度悪くなっているかをお聞きします。これによって、手術中に使う薬の種類、必要なモニター(心電図、血圧計など)が決まります。

手術当日朝

手術当日は普段に内服されている薬で、麻酔の前に飲んではいけないものがあります。その為必要な薬だけ内服していただきます。

手術室入室~手術開始まで

まず、手術室に入り、心電図や血圧計を付けたあとに点滴を2つします。一つは薬を投与する為の点滴でもう一つは持続的に血圧を測る為の点滴です。普段使用している血圧計は測定した瞬間の血圧しか測れません。麻酔の薬は、眠るという作用に加えて心臓を弱らせる働きがあり心臓の悪い患者さんは血圧が下がり易い傾向があるので、持続的に血圧を測定し麻酔中の安全性を高めます。

点滴をし終わったら、今度は先ほど行った点滴のところから眠くなる薬を投与します。薬が投与されてから30秒以内ほどで意識が無くなりそこから先の記憶が無くなります。

麻酔で意識が無くなると、それに加えて呼吸をする事が出来なくなってしまうので、呼吸をお手伝いする為に口から喉を通して気管まで管を挿入します(気管挿管)。その管を通して麻酔のガスを吸ってもらう為にも使用します。この処置を行う時はすでに全身麻酔が効いているので、苦痛を感じる事はありません。

その後、首から点滴をさらに2つさせていただきます。一つは普段手などにしている点滴は漏れてしまう事があるため、首から心臓の近くの大きな静脈に点滴をして絶対に漏れる事のない点滴として一つ(中心静脈カテーテル)、もう一つは心臓のカテーテルの検査のように心臓の中まで管を入れて(肺動脈カテーテル)、心臓の中の血圧や心臓の血液を送り出す量を測定するために使用します。点滴をする時は全身麻酔をした後なので痛みなどは一切感じません、ただ手術が終わって目覚めた時に点滴が入ったままなので首を動かす時に邪魔になりますが、痛みはほとんど感じることはありません。

ここまで終了したら、体を消毒して手術を開始します。

手術中

手術中の麻酔は点滴からの麻酔薬と口の管からの麻酔のガスを適宜使い分けて麻酔をしています。麻酔が切れて痛みなどを感じるのではないか、意識があるのに気づいてもらえないのではないかと心配される患者さんが多いのですが、麻酔中に意識が無いかを確認するために脳波のようなものを使用し意識が無いことを常に監視していますので、手術中の事を覚えている患者さんはほとんどありません。

手術室に入られた時から、手術室を退出するまで、専任の麻酔科が常に付き添いますのでご安心ください。

手術中は手術の安全性を高める為、胃カメラの様な超音波(エコー)の検査(経食道エコー)を行います。この超音波を用いることより、手術中にすぐ心臓の弁が良くなっているかを観察したり、思わぬ合併症が発生した時の診断をつけることが出来たりします。

手術後

手術後は手術にもよりますが、人工心肺を用いないバイパス手術の場合は手術室でお目覚めになってもらい口の管を抜いた後に集中治療室に帰ります。その他の手術(大動脈、弁膜症)の場合は集中治療室で麻酔を覚まし口の管を抜きます。 手術を受ける患者さんはみなさん痛みの事を心配なさりますが、お目覚めになる前から、点滴から痛み止めを開始し目覚めた時に痛くないようにします。

麻酔の合併症

現在では、麻酔薬や麻酔管理の技術が向上し麻酔における合併症はほとんど無く、麻酔が原因でお亡くなりになってしまう患者さんは、日本の統計では0.001%ほどであるとされています。ほとんど安全に麻酔をする事が出来ると考えていただいて結構なのですが、やはり起こりうる合併症はご説明させていただかなくてはならないと思います。

全身麻酔の合併症

麻酔中に使用する薬剤におけるアレルギー反応
  薬による反応は麻酔だけでなく医療全般に言えることです

口にチューブを挿入するときの、唇や歯のきず

口からのチューブを入れるのが困難な方
 顔の形や喉の形によりチューブを入れることが出来ない方がいらっしゃいます

手術後の肝臓・腎臓・肺の障害
 麻酔か手術のどちらの影響か分からない事が多いです

もともとお持ちのご病気の悪化

悪性高熱症

全身麻酔の薬が体に合わなく、ものすごい高熱がでる体質です。治療薬はあ りますが発症すると10%近い死亡率になっています。かなり稀な体質で大体全身麻酔の3から5万件に一件の発症率です。

以上の様な合併症がありますが、麻酔における合併症はほとんどのものが防ぎうるものであると考えています。安全で良質な麻酔を常に考え日々の診療に励んでいます。