不整脈

不整脈とは

急に脈が速くなりドキドキ(動悸)する、脈が乱れる、脈が抜けるといった症状を感じることはありませんか? 原因が心臓由来の不整脈のことがあります。不整脈は心臓の病気(心筋梗塞、心筋症、弁膜症、心不全など)があれば出現することは多くなりますが、特に心臓の病気がなくても不整脈が単独で生じることもあります。
近年、不整脈治療の進歩はめざましく、カテーテルアブレーション治療、植込み型除細動器など、以前は薬でしか対処できなかった不整脈も治療でできるようになってきています。子供から大人まで、若い一見健康そうな方でも不整脈は出現することがあります。これらのうち、最近では不整脈による突然死が注目され、その病態は少しずつ解明されてきており、その診断治療方法も進歩してきています。当センターでは電気生理解析装置を導入し、積極的に不整脈治療に取り組んでいます。動悸や胸の不快感を伴うめまい、立ちくらみ、失神などの症状がある、検診で不整脈を指摘された方など、一度、医療連携室にご相談してください。
一般的な心電図検査(12誘導心電図)です。その検査中に不整脈が生じていなければ、不整脈の診断は困難となりますが、不整脈の出現しやすい心電図かどうかがある程度分かります。不整脈の発作中に心電図をとれなければ、ホルター心電図、心臓電気生理検査などの検査が必要となります。

■検査

1. ホルター心電図(24時間心電図)

小さな携帯型心電記録装置で不整脈を記録します。日常生活においてどれだけ不整脈が出ているか、症状と不整脈が一致しているかなどを調べます。検査中の生活は、入浴以外特に制限されないので、普通の日常生活をして検査を受けることができます。

2. 運動負荷心電図(トレッドミル検査)

運動負荷心電図は、運動、労作による不整脈の出現や誘発性を見る検査です。運動中の心電図変化や不整脈が誘発されれば診断が可能となることがあります。また、特に不整脈をもっていて、運動をする方や心臓疾患がある方が、運動により不整脈の危険性が増加しないかを判断することができる検査です。

3. 心臓電気生理検査

心臓は電気の刺激により動いており、心臓のなかには電気刺激を出す場所とその電気刺激が心臓全体に伝わるような電気の配線(刺激伝導系)が存在します。
通常の心電図検査からは、それらを詳細に把握することは困難です。その際には電極カテーテルという細い管を大腿部や肩、上腕などにある太い血管から心臓に直接挿入し、電気の流れを観察したり、不整脈を誘発することにより詳しく調べることができます。これらの検査をもとに治療方針の決定をします。

■治療

1.薬物療法

薬により、脈の速さを調節したり不整脈自体を予防したりする治療法です。心電図検査や心臓電気生理検査などの結果により、どの薬が効果があるかを決定して投薬することになります。
また薬の副作用により、他のより複雑な不整脈が誘発されたりすることがあり、薬の選択は専門的な判断が必要になります。

2.高周波カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)

カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる心筋の至適部位(異常な興奮を起こす病変部、または不整脈の電気的回路がある部位)を標的にして、高周波により異常心筋を加熱し凝固壊死させることで不整脈を治療する方法です。
方法としては、局所麻酔で大腿部や肩、上腕などの血管から心臓まで数本の電極カテーテルを挿入し、心臓電気生理検査を施行した後、アブレーション用のカテーテル電極で、心内心電図(心臓内の心電図)を観察しながら操作して、心内心電図のパターンと透視上の解剖学的部位からカテーテル先端が至適部位に当たっていることを判断し高周波により治療を行います。
対象となる不整脈は、主に脈が速くなる(頻脈性)不整脈であり、WPW症候群、発作性上室性頻拍、心房頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍などがあります。

3.ペースメーカー治療

脈が遅い(徐脈性)不整脈に対して、ペースメーカーという機械を体内に植え込むことにより脈の速さを調節する治療です。対象となる不整脈は、洞不全症候群や房室ブロック、徐脈性心房細動などがあります。
手術は、局所麻酔で胸の鎖骨下の皮下に機械を植え込み、静脈を介して心臓まで電気刺激を感知したり伝えたりする電線を留置します。手術自体は1~2時間で済みます。退院後は、機械の調子や不整脈の出現を観察し、電池消耗を見するために、定期的(3~6ヶ月)に外来通院が必要となります。病態、ペースメーカーの機種によって異なりますが、ペースメーカーの電池寿命は7年から10年です。

4.両心室ペースメーカー治療

心筋梗塞や拡張型心筋症など心臓の収縮機能が低下した方で、心臓内の刺激を伝える線維の障害のためにいっそう心臓の働きが低下し心不全が悪化している場合があります。こうしたケースでは、左心室と右心室を同時に刺激できるペースメーカーを埋め込むことにより、心機能を改善し日常生活の行動範囲が拡大できることがあります。
ペースメーカーは従来、脈の遅い方の治療器具でしたが、重症心不全の治療器具としても応用できるようになりました。薬の治療だけでは限界で、他の治療の効果が少ないときに行う治療です。

5.植込み型除細動器(ICD)

薬物や他の治療(カテーテルアブレーション)により予防が困難な突然死を引き起こす可能性のある致死性不整脈が対象となります。電気刺激や電気ショックでその不整脈を治療する機械を体内に植込む治療です。
対象となる不整脈は、一部の心室頻拍や心室細動といった命に関わる危険な不整脈です。植込み方法や、植込んだ後の外来通院はペースメーカー治療とほぼ同様ですが、ペースメーカーよりも多機能であるため機械はペースメーカーよりも一回り大きなものとなります。