診療科・部門紹介
不整脈センター センター長
曽原 寛
不整脈センター 医長
猪原 実
不整脈センター 医長
仲村 佳典
聞き慣れた病名かもしれません。テレビでも健康番組等で取り上げられるポピュラーな病名ですね。しかし、実は症状の有無、病気の重症度、治療の方法、等々皆様が知るべき情報はたくさんあります。
無症状だから、年齢(加齢)病だから心配ない、死ぬまでお付き合いしていかなくてはならない病気だけど、死ぬことはまずないから心配ない、このような声を聞いたことはありませんか。
確かに、無症状だから気づかぬまま数年が経過することもあるでしょう。でも脳梗塞で脳外科や脳卒中科に搬送された時に心房細動と診断されることもかなりの高率で聞く話なのです。
数年でそんなに変わらないでしょう? いいえ、心房細動も根本的に正常な脈に戻せる時期と永遠に心房細動調律でしか生きられない時期に大別されます。
つまり、しっかり治療すれば99%は治る発作性心房細動、電気ショックでも戻せなくなる慢性(永続性)心房細動です。ちょうどその中間に持続性心房細動があります。いわば、初期の癌であれば根治できるが、いかなる手を使っても治せない末期癌と重なる部分があると思います。
ですから、健康診断や会社の検診で「心房細動ですね」、と指摘されたら専門病院に相談に行かれることをお勧めします。決して放っておいてはいけません。
今のあなたの心房細動の原因となっている領域が狭ければ狭い程、現時点での心房細動の根治は十分可能なのです。
肺静脈が心房細動の起因因子であることはフランスのグループが20世紀末に提唱し、その後肺静脈およびその周囲、左心房後壁、心房中隔や上大静脈にも起因し心房細動が持続するエンジンになっていることが判ってきました。それとともに心房細動に対するカテーテル治療(カテーテルアブレーション)も発展してきました。
理想的なカテーテルアブレーションとは?
短時間でいい効果が得られ、それが永続すること、ですね。しかもある特定の先生のもとでしかいい成績が得られないとすれば、それはある意味問題です。なぜなら、その先生以外の術者では期待される治療成績が得られず複数回の治療を強いられることになるからです。だれもが、ちゃんとトレーニングを受けてルールを守って治療しさえすれば、かなりの高率で良い成績が得られる治療法が理想です。
そういう観点から我々の施設では葉山ハートセンターの佐竹修太郎先生とともに開発してきたホットバルーンカテーテルと欧米で開発されたクライオバルーンカテーテルの両方で心房細動アブレーションを行っています。
ホットバルーンカテーテルは2000年より佐竹先生と共に開発に取り組み、2015年11月に厚労省に認可された本邦初の心房細動治療器具です。2016年の4月より保険償還され通常の診療体系で治療を受けることが可能となりました。我々はその開発当初より携わり、種々の実験、臨床研究、多施設共同治験を執り行い、これまでに1000例を超える治療経験があります。ホットバルーンの全てを知り尽くしているといっても過言ではありません。
クライオバルーンは現在28mm径で北半球が冷凍される第二世代バルーンを使用しています。これらのバルーンの特徴は以前の方法であれば数十回焼灼を必要としていた治療が4—5回の通電で治療を終えられる、即ち3時間以上かかっていた手技時間が1時間程度しかかからないこと、成績も満足の行く数字が得られること、数パーセントの頻度で起きていた心タンポナーデがほぼ皆無になってきたという点にあります(欧米での報告でも同様)。ホットとクライオの使い分けは解剖学的な特徴、心筋肥大の有無、等で行っています。肥大型心筋症、高血圧症、若年者ではクライオバルーンを、より広範囲への治療を要する場合(左心房や肺静脈の拡張、病歴が長い方、持続性心房細動や慢性心房細動の方)はホットバルーンを使用しています。
しかし、バルーンにも欠点はあります。細い肺静脈や枝だらけの血管、巨大な肺静脈には使用しづらいと言えます。慢性心房細動のように非常に複雑な電気回路が形成され局所の電位を詳細に観察しながら治療を要する場合などです。そういう場合には一番の基本である肺静脈周囲をバルーンでシンプルに片付けて、残りの複雑電位を通常のアブレーションカテーテルとコンピューター(3Dマッピングシステム)で治療するというハイブリッド治療法に取り組んでいます。
心房細動アブレーションは一回で治せる場合と複数回治療を要する場合とがあります。ご自分の心房細動は治せるタイプなのか、服薬についてはどうなのか、ずっと飲み続けた方がいいのか、終了オフとできるのか、等々わからない事がございましたら気軽にお声かけ下さい。スタッフ全員であなたの心房細動ケアをさせていただきます。
大崎病院・東京ハートセンター 不整脈センター
センター長 曽原 寛
不整脈センター センター長
心房細動に対するカテーテルアブレーションは確立した治療法のひとつです。しかし、その治療成績には術者の力量が関与することも事実です。そのギャップを埋めるべく登場したのが、高周波ホットバルーンカテーテルです。葉山ハートセンターにおいて15年の歳月をかけて佐竹先生と共に開発に取り組み、2015年11月に厚労省に認可されました。2016年の4月より保険償還され通常の診療体系で治療を受けることが可能となりました。我々はその開発当初より携わり、種々の実験、臨床研究、多施設共同治験を執り行い、これまでに500例を超える治療経験があります。ホットバルーンの全てを知り尽くしているといっても過言ではありません。また、我々は安全性と有効性に優れた圧センサー付きのアブレーションカテーテルで3Dマッピングシステムを導入し、Box isolation(左心房広範囲隔離術)を行っています。さらに2017年からは冷凍(クライオ)バルーンも導入し精力的に治療に取り組んでいます。
どうか皆様、15年の歳月をかけてこの日本の地で作り上げたホットバルーンと最新の圧センサー付きのアブレーションカテーテル、クライオバルーンによるアブレーションで心房細動を根治してみませんか。
皆様の心房細動治療の一助になれれば幸いです。
閉じる
不整脈センター 医長
私たちは心臓病治療の専門チームです。循環器のエキスパートとして特に不整脈でお悩みの皆様に誠心誠意応えていきたいと思います。
当院のような単科病院でこそ成し遂げられる機動力で、チーム一丸となって治療にあたりますのでお気軽にご相談ください。
執筆論文
『A case of repeated occlusion in the common iliac artery due to an unexpected stent deformation. 』
CARDIOVASCULAR INTERVENTION AND THERAPEUTICS
Volume 30, Number 2, April 2015: 162-167
M Ihara
『Efficacy of Metal Tip catheter for chronic total occlusion lesions in peripheral arterial disease.』
CARDIOVASCULAR INTERVENTION AND THERAPEUTICS
Volume 27, Number 1, January 2012: 19-23
M Ihara
『女性と循環器疾患』
横浜医師会 医学シリーズ第29集 2011
『性差を考慮した動脈硬化性疾患および冠攣縮性狭心症の検討』
更年期と加齢のヘルスケア Vol.9,No1 2010
閉じる
不整脈センター 医長
加齢とともに心房細動の患者数は増加しており、この心房細動は脳梗塞などの塞栓症により重篤な症状が引きおこされる可能性があります。また、塞栓症予防のために抗凝固療法(血をさらさらにする薬の内服治療)が必要となりますが、この抗凝固療法は出血のリスクを高めてしまう可能性があります。
一方、この心房細動に対する根本的な治療は今まで困難で、塞栓症予防のために長期通院による抗凝固療法を行い、保存的に経過をみることが主でした。しかし、この心房細動に対するカテーテルアブレーション治療がここ数年で飛躍的に発展しており、当院では積極的にカテーテルアブレーション治療を行っています。
カテーテルアブレーション治療は心房細動の初期の方が再発率も少なく、有効性が高い治療法ですが、慢性の不整脈といわれた方でも治療が有効な方も少なくありません。内服加療で経過をみるか、カテーテルアブレーション治療を行うべきか、迷われている患者様もいるかもしれませんが、ぜひ一度相談に来てみて下さい。
また、透析中の方でもカテーテルアブレーション治療は可能ですのでご相談下さい。
執筆論文
Peer-reviewed scientific articles :
Nakamura Y, Yamada Y, Shimomura H, Nagayoshi Y, Tsujita K, Yamashita T, Fukuda M, Ohba K, Nako H, Ogura Y, Chitose T, Yamaguchi M, Nagata T, Soejima H, Kaikita K, Sugiyama S, Ogawa.
The effect of edaravone on plasma monocyte chemoattractant protein-1 levels in patients with acute myocardial infarction. J Cardiol 2009;54:416-424
閉じる