心臓血管外科

副院長・心臓血管外科 磯村医師 書籍出版のお知らせ

副院長・心臓血管外科 磯村医師が書籍を出版いたしました。

『心臓弁形成手術書[Web動画付] スペシャリストのコツ、技とキレ』
著:磯村正, 小宮達彦, 國原孝
出版社:南江堂
発行年月:2017年9月

南江堂のホームページでは詳細内容が紹介されています。
http://www.nankodo.co.jp/g/g9784524255375/
ぜひご覧ください。

以下は書籍に掲載されている「序文」の全文です。

序文
心臓弁膜症に対する手術は機械弁、生体弁の発達と改良により弁置換術の安定した早期、中期成績が得られるようになってきた。しかし、長期成績をみると、生体弁の耐久性や機械弁のワルファリン服用による合併症が依然として問題になっている。
一方、Carpentierらにより発展してきた僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する僧帽弁形成術(MVP)は、その長期予後が僧帽弁置換術(MVR)に優ることが解明され、MRに対する早期手術はMVPが確実にできることが条件とされるなどMVPの必要性が高まっている。また、「謎めいた弁病変」とされていた三尖弁閉鎖不全(TR)に対しても、TRの存在が長期予後を不良にする要因となることがわかり、三尖弁形成術(TAP)の同時手術が積極的に施行されるようになってきた。大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対しては、大動脈基Rに対するBentall手術が報告され、安定した成績が示されるようになったものの、人工弁による術後の合併症を防ぐために自己弁温存手術であるreimplantation法(David法)、remodeling法(Yacoub法)が報告され、Davidらがreimplantation法の20年の遠隔成績が良好なことを報告し、大動脈基部手術では自己弁温存手術が優れていることが示されるようになった。この基部拡大によるARの病態を含めてARの分類、病態に基づいた大動脈弁形成術(AVP)の術式が見直されるようになり、弁輪拡大のないARに対するAVPも一気に注目されるようになってきた。
しかしながら、弁形成術においてはその完成には多くの経験が必要であり、少数例しか手がけることができない外科医にとっては、弁形成術に習熟するまでには多くの症例が犠牲になることもあり得る。著者自身も20年前にMVPやreimplantation法を始めた頃に、術後早期に逆流が再発し、半年以内に再手術で弁置換術を行う例を経験し、その頃は弁形成術に関する成書はなく、David先生に相談したところ、「弁形成は自分でやってみないとわからないし、外科医は経験を積み重ねなければいけない」と言われたこる。当時は弁形成術に対する有用な手術書は見当たらず、弁形成術の上達のために実際の心臓の解剖標本や手術ビデオを何度も見直し、術前のシミュレーションをしっかり行いながら弁形成術を続けた。しかし、弁形成術の優位性がわかってきた現在でも、弁形成術の確実な手術法を習得する手術書を見つけることができない。本書は弁形成術における術野の外科的解剖を十分に解説し、著者らの多くの経験に基づき、糸針や運針に至るまで弁形成術を詳細に解説し、各項目における手術ビデオで確認できるようにした。
本書がこれから弁形成術を目指す外科医のみならず、すでに弁形成術を経験している外科医、メディカルスタッフの方々にとっての一助となり、多くの症例の手術予後の改善につながれば、著者らの望外の喜びである。また、弁形成術は外科医としての技量が重要で、確実に行えば長期予後を期待できる術式であるが、本書に示した著者らの経験からの適応、手術法を自身の技量に合わせて遂行し、決して術中に弁形成術から弁置換術へ変更することを躊躇せずに手術を確実に完遂し、心臓外科医として一歩一歩、んでいただければ幸いである。
なお、手術の挿入図は著者らの経験した手術の模式図をもとに、心臓手術経験のある佐藤了先生(耳納高原病院)に要点を確実に示すように描いていただいた。深く感謝の意を表する。
2017年7月
執筆者を代表して
磯村正