ご挨拶
臨床工学室は生命維持管理装置(人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置)の操作や各種医療機器の保守・点検をしている部門です。国家資格を取得した専任の臨床工学技士が従事しています。
患者様に安心・安全・安楽を提供するために、学会活動、勉強会への参加をし、日進月歩で進化する業務に対応しております。
臨床工学室の特徴
業務内容は大きく分けて3分野にわけられます。
1. 循環器業務
手術室業務(心臓外科手術)
臨床工学技士は心臓手術における人工心肺装置の操作を行っております。人工心肺装置とは、心臓手術を行う際に血液の循環と酸素加機能を代行する生命維持管理装置です。 人工心肺装置を使用することにより、安全に心臓手術を行うことができます。
カテーテル室業務
心臓カテーテル検査
検査では、診断用のカテーテルを用います。循環動態検査(心内圧測定・心拍出量測定)、造影検査(冠動脈造影・左室造影・大動脈造影)にて評価します。
臨床工学技士はポリグラフと呼ばれる機械の操作を行います。ポリグラフでは、心電図や圧測定、患者さまの生体情報のモニタリングを行います。他には手技の記録や手技に使用される物品を術野に出す業務を行っています。治療では、挿入したカテーテルの中を通して種々の器具を挿入し、血管拡張術、循環補助を行います。血管の狭くなっている部分にバルーンと呼ばれる風船のようなカテーテルを使用して血管の中を広げます。広げた部分が再び狭くならないようにステントと呼ばれる金属を入れます。病変部にバルーンやステントを挿入すると血行動態が変動しやすいので、臨床工学技士は特に注意して生体情報をモニタリングしています。ロタブレータコンソールの操作、急変時の補助循環装置やペースメーカー操作などがあります。
カテーテルアブレーション
心臓の拍動は心臓の電気信号によって起こります。不整脈とは正常でない異常な電気信号によって引き起こされます。
カテーテルアブレーションとは、不整脈を引き起こす異常な電気信号の発生源と考えられる心臓内の局所に、カテーテルの先から熱を加えることで焼灼を行います。不整脈の原因となる異常な興奮の伝導路を焼き切ることで、正常なリズムを取り戻す方法です。臨床工学技士は刺激装置や心内心電図の記録、3Dマッピングシステム(心臓を立体的表示する機器)などの装置使用して治療のサポートを行っています。
ペースメーカー
ペースメーカーとは心拍数が少なくなった場合に人工的に心臓を刺激する機械です。この機械を植え込むことにより正常な心拍数を維持します。臨床工学技士はプログラマという機械を操作して、植込み時に刺激閾値、波高値、リード抵抗などを測定し患者さまの情報を得ます。これを元にして刺激部位やのPMの出力、感度などを設定します。植込み後にペースメーカーが正常に作動しているかのチェックも行います。また、ペースメーカー植込みの患者さまの入院時もチェックしています。
ペースメーカーに異常があった場合などの対応や、チェックも行っています。
外来では、ペースメーカーをはじめICD(植込み型除細動器)やCRT(心臓再同期療法)のデバイスに対するチェックや管理を行っています。臨床工学技士はプログラマを操作して、デバイスの動作や電池残量、設定が適切かどうかをチェックします。必要があれば設定変更を行います。また、遠隔モニタリングといって自宅にいても病院側でデバイス情報を得ることができるシステムも活用し臨床工学技士でその情報を受信し異常の有無をチェックしています。異常が見つかれば患者さまに病院に来院していただくように依頼しチーム医療に貢献しています。
2. 透析業務
現在、わが国で腎臓病のため透析治療を受けている患者様は、年々増加の一途を辿っています。最近の傾向として10年以上の長期透析患者、糖尿病患者、高齢患者の増加に伴い、心臓病の合併が多く見られるようになってきています。当院では主に、他施設での維持透析患者の皆様の合併症による当院入院加療中の血液透析を行っています。
入院透析:当院は、維持透析患者様のPCI(カテーテル血管治療)、心臓手術後に一時的に透析が必要になってしまった患者様に対し積極的に術中・ICUでの血液透析や、CRRT(持続的腎代替療法)などを併用し、全面的にバックアップしています。
3. 機器管理業務
平成19年4月1日に改正医療法の一部が施行され、医療機器を安全に使用するために医療機関が対処すべき責務が定められました。病院が管理する全ての医療機器を医療機器安全管理責任者が筆頭に安全管理するといった内容です(病院以外の在宅等で使用される医療機器および他の病院に対して貸し出された医療機器も含まれます)。
当院では専門知識・技術を備えている臨床工学技士が医療機器安全管理責任者を担当し、臨床工学室が汎用的な医療機器から専門機器を管理しています。具体的には貸出・返却、保守・点検、備品管理(購入・廃棄)、教育、環境整備、情報提供などの一括した業務を行っています。これらの業務によって臨床現場へ信頼性の高い機器を過不足無しに供給するとともに、正しい資産管理、経済効率性、安全性を高める役割を果たします。